2019総まとめ

2夜連続更新、二日目は制作についてです。

編曲も今年はたくさん担当させていただきましたが、自分が作曲したもののみ挙げています。

 

昨年のまとめはこちらをどうぞ。

gentomiyano.hatenablog.com

 

「スーパーヴィーニエンス」

「ハッピーエンディング」/フィロソフィーのダンス

from「エクセルシオール」 (3/22)

 

詳しくは下記記事参照のこと。

gentomiyano.hatenablog.com

 

「Dear My Star」/MELLOW MELLOW (4/10)

open.spotify.com

MELLOW MELLOWが「石ノ森章太郎 ART TOY FES.」のアンバサダーを努めさせていただいたということで、「サイボーグ009」とのコラボアートワークもありました。

そんなわけで、SF的世界観とMELLOW MELLOWのサウンド感の融合を目指すべく、スペーシーなダンスミュージックに。歌詞にも活かされています。

アニメのアートワークとダンスミュージックのコラボレーションというのは過去にも例がありまして…わかる方にはわかると思いますが、そんなこともイメージしたりしました。

作詞はおなじみ深川琴美さん。歌詞届いたとき痺れました。

 

そして、アレンジは伊藤嵩也くんとの共編曲。アレンジを誰かと一緒にやるって普段はなかなかなくて、彼のアイデアが活きた部分がたくさんあったので楽しかったです。

 

僕のMELLOW MELLOWの担当曲は一貫してアコースティック・ギターを使ってきたのですが、ここが唯一の例外。

 


「Believer」/伊藤美裕(4/20)

open.spotify.com

日本コロムビア創立100周年記念アーティスト」として鮮烈なデビュー、2011年末には第53回日本レコード大賞の新人賞を受賞されたという経歴を持つ、伊藤美裕さん。

謡曲をフィールドに活躍されてきた美裕さんですが、4年ぶりの新曲の制作ではシティ・ポップへとその活動の場を広げるということで、僕にお声がけ頂きました。

僕にとっても久々にシンガーもののお仕事だったのでとても楽しかったです。

この曲のレコーディングではなんとドラム・沼澤尚さん、ベース・山口寛雄さんという

日本のグルーヴを支える一線級のお2人に演奏をしていただきました。嬉しかったなあ。

アルバム「AWAKE」でもこの曲が収録されて、ほかの楽曲の豪華な顔ぶれの中に並ばせていただきました。

 


「Time and tide wait for no man」/XOXO EXTREME(9/9)

open.spotify.com

発表は昨年。プロデューサーの大嶋さんとは以前から交流があり、やっと数年越しで実現できた楽曲提供です。

プログレッシブ・アイドル」を標榜するXOXO EXTREME(通称:キスエク)は

そのコンセプト通り往年のプログレッシブ・ロックを下敷きにした楽曲で活動しており、その中でも主にキング・クリムゾンやマグマなど、かなり「濃度の高い」楽曲群が多い印象だったのですが、その中でYESやRUSHなど、少々ポップ色のあるプログレを目指そう、ということで取り組みました。

楽曲自体もそうなんですが、たまたまリサイクルショップで見かけた中古の12弦アコギが活躍したり、どうしてもクリス・スクワイアなベースサウンドが出したくて友達からリッケンバッカーのベースを拝借してきたり、機材面でもいろいろ面白いチャレンジをしていきました。


「君も好きだったんだね、夏」/寺嶋由芙(9/18)

open.spotify.com

シングル「恋の大三角関係」のカップリング。

曲も詞もなかなか紆余曲折あった楽曲です。

個人的にはとても思い入れ強くて、メロのちょっと懐かしい感じの雰囲気もゆっふぃーに似合うのではないかなとずっと思っていました。

サビ前の一部転調は本当に自分のなかでもよくできたなーと思っていてお気に入りです。

作詞はヤマモトショウさんとゆっふぃー本人の共作。


「STEP BY STEP」 aimai soleil from A応P(9/18)

open.spotify.com

日を同じくしてリリースされたのがこちらの楽曲。アレンジは倉内達矢さんに担当していただきました。以前倉内さん作曲の楽曲を僕がアレンジさせていただいたことがあって、不思議なご縁だなと感じました。ギターソロ、めちゃめちゃかっこよくてシビれてしまいました。

作詞は「kissはあげない」でも一緒にやった米田浩貴くん。彼とも数々の作品を共にしたのでやりとりもツーカーです。

 
「ダンス・オア・ダンス」/フィロソフィーのダンス(9/27)

open.spotify.com

踊るしかねーでしょうよ。

ということで、今夏六本木の「SUMMER STATION」にて初披露した楽曲、春ツアーのライブ音源をカップリングにどーんと収録してリリースされました。

タイトルの能天気加減もさることながら、ド頭の「Feel All Soul, Feeling On Dance」も会心の出来です。コーラで乾杯だ。

作詞、もちろんヤマモトショウさん。

 

「WANING MOON」/MELLOW MELLOW(10/2)

open.spotify.com

今年の夏を駆け抜けた楽曲がここでリリースです。

Dear My Starの次を考えたときにもう少し肩肘張らない、ゆったりしたノリのものが欲しいと思いました。

こちらも作詞深川琴美さん。歌詞には思わぬギミックもあったり…?



「Groovy Journey!」/MELLOW MELLOW(10/2)

open.spotify.com

そして上記カップリングがこの曲。こちらも深川琴美さんとのタッグ。

こういうミドルなものって歌いこなすのが結構難しくて、
メンバー本人もレコーディングでも結構つかむのに苦労していたみたい。


「君も好きだっただね、夏」のマスタリングの日に打ち合わせをして、
TIF1日目と2日目で構想を練って、3日目には出来てた記憶。2曲ともめちゃ大変でした。


「シスター」/フィロソフィーのダンス(11/18)

open.spotify.com
記憶に新しいG4 Tour初日でお披露目になった曲。

この曲は、現代的なダンスミュージック、R&Bのアプローチと、90'sの王道をうまく融合させたいと思って作りました。

なので、今までと違ってサンプリング的な発想が非常に多いです。

 

ベースはバンドワゴンツアーでもおなじみの、武宮優馬くん、戸澤直希くん

ドラムに油布郁くん、の布陣です。

 

ドラムはAメロ部分はループ的なフレーズを録って、

サビは「ハイハットのみ」重ねで、キックとスネアが打ち込み。

ベースも、Aメロ部分はループに合わせたグルーヴ感で、サビは思いっきりレイドバック。

そして、Aメロとサビでそれぞれ、違うベーシストを起用しました。

これも、素材的な解釈でまったく異なるグルーヴが欲しかったからです。

 

Aメロなど曲の全体を占めているループは、叩いているのはもちろん油布くんですが、フレーズはJeff Beckの「Come Dancing」のものです。これは、有名な楽曲でもたくさんサンプリングされているビートです。

open.spotify.com(開始から9秒までのドラムのフレーズです)


この、ドラムループありきで一つのコード進行というのも、ヒップホップやダンスミュージック的な音楽制作に着想を得てつくられたものです。

また、歌のレコーディング的にも、このレイドバックの解釈や跳ねたリズムの解釈という点で、かなり大変なものでした。今までのフィロソフィーのダンスの楽曲の中でも最高難易度といっても過言ではない作品です。

ライブでの完成度は正直当初不安なものがありましたが、徐々に完成度が高まっていく感じもツアーならではのものだったかもしれません。

 

---------------------------------------------------------------------------------------------

今年もたくさんの作品に関わることができて本当によかったです。

どの曲もお気に入りで、毎年自分のコレクションが出来上がっていくような気持ちです。

いまやっているものも含めて、来年もたくさん良い曲を作っていこうと思っているので、引き続き、応援よろしくお願いいたします。

ありがとうございました。

 

よいお年を!!

ライブ回顧録 ダイジェスト

2019年もあと少しになりました。
あまり精査せずに軽い感じで更新できるツイッターと違い、
ブログなど、ある程度まとまった文章を残る形で書くというのは大変なもので、
この記述間違っていないか?抜けはないか?誰かについて言及するときは失礼な書き方になっていないか?
なんていうことをしっかり考えながら記事にしなければならないので、
なかなか腰を据えて書く時間が取れず、ほぼ半年以上ぶりの更新になってしまいました。ごめんなさい。

年末までにすべてまとめきりたいということで、2夜連続の更新にしたいと思います。

 

まずは1日目、ライブについて。

 

昨年夏のリキッドルームの際はちゃんとした分量で回顧録を残したので、

0616回顧録 その1 - 宮野弦士のいまさらするまでもない音楽の話

0616回顧録 その2 - 宮野弦士のいまさらするまでもない音楽の話


それに倣って昨年冬の品川ステラボール以降もちゃんと記していこうと思っていたのですが、タイミングを逸してしまい。。
そんなわけで、ステラボールから最新の新木場コーストまでのバンドセット公演を一挙に、
どんなことが違ったのか?それぞれどういう形で組み立てたのか?ということに触れたいと思います。

改めまして、各公演にお越しいただいた皆様、本当にありがとうございました。

 

リキッドルームから数えて計4回のバンドセットワンマン。
それぞれ異なるメンバー構成でやらせていただくことになったわけですが、
アンサンブルにおいて大切なのは、いかにイメージを共有できるか、ということです。
その点では、どの公演でもそれぞれ全力を尽くしていただけたことが本当に恵まれた、幸せなことだと感じています。
どんなに素晴らしいミュージシャンでも、そういった譜面上の情報を越えた機微を共有できなければ、
最大のパフォーマンスを発揮することはできません。

かならず編成は充分な協議のもとで行われますが、
一つの舞台には一つの枠しか用意されておらず、スケジュールだったり様々なことで、
そこで選択をとらなければいけない、というのは心苦しいことですが、
例えば「比較して優れている」からお願いする、ということはある意味では全くなくて、
その都度で目指していることに応じて、一番フィットするかたちで臨めるように、ということを考えています。
あえて強調して書きますが、そういう点で、どの公演も僕にとってはベストメンバーと思っています。

 

続きはこちらから。

続きを読む

フィロソフィーのダンスのこぼれ話

こんばんわ。フィロソフィーのダンスのデータアーカイヴ担当こと宮野です。

 

改めまして「エクセルシオール」お聴きいただいている皆様ありがとうございます。

予告なしでしたが、ふとネタを思いついたのでブログ更新します。

今回はフィロソフィーのダンスにおけるトラックのいろんな別バージョンなどの小話を思い出しながら書いていこうかなと思います。ライブでもその日のためだけの特別バージョンが多く存在しているので、そういうこととか。

2015年

◆「Groove Is In The Heart」

初期の登場SEはこの曲でした。Deee-Liteですね。

open.spotify.com

 

この曲ってハービー・ハンコックのサンプリングなんですね。(「Bringing Down The Byrds)

www.youtube.com

2016年

◆「アイム・アフター・タイム」リミックス(7inch)

昨年の「ライブ・ライフ/イッツ・マイ・ターン」もパソコン音楽クラブさんにリミックスして頂きましたが、実は僕もセルフリミックスしてます。

リンドラムのパターン中心のちょっと80'sっぽい仕上げ。これって今手に入るのかな?

セルフリミックスって自分の前のアレンジのイメージも残ってて結構難しいんですけど。今やったらもっと違う感じにするかなあ。翌年の新宿BLAZEでのワンマンライブ、バッド・パラダイム~アイム・アフター・タイムのメドレーのところで一瞬このリミックスのワンフレーズが登場します。(こちらはサブスクとかでも聴けると思う)

 

◆「D.T.F!」

ギターがLi-sa Xさんバージョンと僕バージョンがある。ミックスとかもいろいろ違う。

 

◆「いつか大人になって」

アルバム収録とは別バージョンのアレンジが存在した。(発表はされていない)

 

◆「好感度あげたい!」

「Foo, Foo, Foo, Foo,」のコーラスは全部ハルちゃん(8本ぐらい録った)

現場で起こるコールは3発(ふっふっふー)ですがフレーズ的には4発なんです

 

◆アルバム「FUNKY BUT CHIC」のシークレットトラック

「アイドル・フィロソフィー」のリミックス。誰が担当したかシークレットだった記憶があるのですがこれってもう発表されたんだっけ。

 

◆「好きだから好き」

唯一スタジオ音源化されていない曲。

サウンドクラウドに上がっているのと、普段ライブでやる時のトラックはオリジナルバージョン(ショウさんアレンジ)ですが、原宿アストロホールでの1stワンマンだけ使用されたバージョンは僕のリアレンジ

 

2017年

◆SE「FUNKY BUT CHIC」

この年からこのSEに変更。冒頭の声の主は…?(ナイショです)

 

◆「コモンセンス・バスターズ」Move On Upイントロ

記憶に新しい品川ステラボールのライブ含め、何度かフィーチャーされていますが、

新宿BLAZEでの3rdワンマンが初出。これは当時のMg.初見さんアイデアだった記憶。

open.spotify.com

めちゃくちゃ余談ですがこの3rdワンマンの週僕は扁桃炎でブッ倒れてました

 

◆「ジャスト・メモリーズ」

3rdワンマンでは松本ジュンさん。クアトロの4thワンマンでは藤原マヒトさんが、それぞれゲストで登場。ピアノを演奏して頂きました。

 

◆クアトロ4thワンマン

"4rd"ワンマンね。(わかる人にはわかるネタ)

後半セクションでは、今やおなじみのPer.早藤寿美子さん (a.k.a すみちゃん)が登場。

ここが初めてのライブでした。(いずれもライブ音源が残ってます)

 

この日初披露だった「ダンス・ファウンダー」がSEからノンストップのヴァージョン。

 

◆「ニュー・アタラクシア」

僕が作曲した曲はデモの時にDFPdemo_xx みたいな連番を振っているんですが

この曲は「オール・ウィー・ニード・イズ・ラブストーリー」の次に作られてました

(「オールウィー~」がDFPdemo03、この曲がDFPdemo04)

当時ツイッターにも書いたのですが、もともと夏に出したいつもりで作ったこの曲ですが、2016年には「告白はサマー」(demo05)が出てて、この年は「DTF!」を8月のTIFでお披露目していたので、2年越しで危うくお蔵入りになりかけました(出せてよかった)

 

2018年

◆NPPでのノンストップメドレー。

「アイドル・フィロソフィー」から「すききらいアンチノミー」のマッシュアップミックスなど。

 

◆「ときめきフィロソフィー」(転換映像)

夏のツアーでの転換映像。(「エクセルシオール」のDVDにも収録)

「告白はサマー」(日常パート1)

「オール・ウィー・ニード・イズ・ラブストーリー」(日常パート2)

「アイム・アフター・タイム」(シリアスパート)

パラドックスがたりない」(切ないパート、エンディング)

で、それぞれ、ゲーム音楽風のアレンジ。

 

◆「夏のクオリア

ikkubaruさんのリミックス。

 

◆同じく前述した「アイム・アフター・タイム」のパソコン音楽クラブさんリミックスも。

 

◆「イッツ・マイ・ターン」

MV冒頭の出撃シーンで流れているBGMが、よく聞くと「ダンス・ファウンダー」。

 

イントロのFXはオープニングSE「FUNKY BUT CHIC」のアウトロの逆再生と、

フィロソフィーのダンスの歴代曲のコーラストラックのフェードイン

(出てくる順に、「アイム・アフター・タイム」、「アイドル・フィロソフィー」、「エポケー・チャンス」「ラブ・バリエーション」「ダンス・ファウンダー」)

コーラスがめちゃくちゃ多かった。8割ぐらいあんぬちゃん(総勢20本くらいあるかも)、あとマリリちゃん

 

◆「ライブ・ライフ」

間奏の「ぱっしゅわー ぱーっぱっ」のコーラスがお気に入り(これは確かマリリちゃん)

 

「Hey! Hey!」は僕もうすーく混ざってます

 

◆「ラブ・バリエーション」

MV冒頭のテレビ番組風BGM。BEAT CLUBぽかったりぽくなかったり

 

「WITH SCOOBIE DO」のバージョンはタンバリン自分で振って生録しました

クラップもフィロのスメンバーと僕で生で録音している。

スクービーの皆さんが帰った後僕は居残りしてオルガンを録った(これも生)

 

◆「はじめまして未来」

品川ステラボールで披露されたバージョンのイントロがEW&Fの「September」

open.spotify.com

(CD版もBメロよく聴くと「Let's Groove」っぽいシンセ)

 

◆「すききらいアンチノミー」ツアーVer

Twitterでちょっと触れましたが、「イッツ・マイ・ターン」合わせで「Love Foolosophy」イントロ。(地味に「Foolosophy」もフィロソフィーとかかっている)

open.spotify.com 

 

◆「ハッピー・エンディング」の「ラララ……」のコーラスはメンバー4人に加えて僕、ショウさん、加茂さんも参加。

 

という感じでございます。いろいろあったな。

 

次回は本当にツアー明けになると思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

アルバム「エクセルシオール」作編曲家による解説 〜VISIONS OF 2018 編〜

いよいよ、日付変わって本日はアルバム「エクセルシオール」の発売日。

前回記事も多くの反響をいただき、ありがとうございました。

まだご覧になってない方も、この記事のついでにぜひ。

アルバム「EXCELSIOR」作編曲家による解説 - 宮野弦士のいまさらするまでもない音楽の話

 

本日、全作詞を担当したヤマモトショウさんの記事も公開されていますので是非お読みになってください。読み応えあります。

フィロソフィーのダンスエクセルシオール』作詞家による全曲解説|ヤマモトショウ |note(ノート

https://yamamotosho.com/n/n060b14b0483e

 

既に配信で聴いてくださった方も、我慢できずに今日フラゲしてきたみなさんも、今か今かと、今夜まさにわくわくしているアナタも。全ての人に本当に感謝したいです。楽しんでください。

 

続きを読む

ミキシングとマスタリングって何が違うの?

こんばんは。昨日の記事への反応ありがとうございました。

昨日Twitterの質問箱で質問を受けつけたところ、アルバムマスターとは具体的に何が違うのか、という問い合わせがいくつかありました。

どうしても短い文では伝えきれないため、改めて自分の言葉で書いてみようかなと思った次第です。

 

とはいえ、あらゆるDTM系ブログやYouTube動画解説などで死ぬほどこすられた題材なので、もっと適切な説明はGoogle検索などをすれば容易に見つけられると思います。あくまで、僕の中の捉え方がどうであるか、ということがこの記事の趣旨になると思います

(まさに「いまさらするまでもない音楽の話」なので、ブログタイトル的には本当その通りですね)

 

さて、音楽の制作、ここでいう制作は「録音物」と定義しますが、実にさまざまな工程を通って出来ています。

 

みなさんがイメージするところの音楽の制作というのは、おそらくは

・メロディを作る。

・楽器、歌を録音する。

 

というところが、まあほとんどだと思うのですが

さらにいくつか、重要な工程があります。

 

その一つが、ラッキングです。

たとえば、みなさんは「多重録音」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、音楽制作における録音とは、必ずしも同時に演奏して「せーの」で録音してあるとは限りません。

また、同時に演奏されたものでも、たとえばカセットウォークマンやボイスメモのように、ボタンを押してハイおしまい、ということではないものてす。


具体的には、「トラック」や「チャンネル」と呼ばれるものがいくつも並んでいて、たとえば1番にはドラムの音。2番にはベースの音。3番にはギターの音……という形で、別々に録音がされています。

ビートルズの頃(1960年代)には、このトラックというのが4つ使えるテープレコーダーが普及して、それからは8,16……と増えていき。


カセットのようなテープにレコーディングするタイプのものでは、24トラック(チャンネル)というのが、一般的なもので、そのあと、デジタル(データ)に録音するものが開発されたときには、48つも使えるぞ、というのが主流になりました。

 

さて、当然ながら、いろんな楽器を重ねるには、闇雲に音を重ねていっては、あとで「あれ?ギターの2本目は何番に入っているんだ?」

「コーラスをたくさん重ねてたら、メインボーカルを入れるチャンネルがなくなってしまったよ!」

というような事態に陥ります。

 

それを防ぐために、何番に何を入れるかを決めて紙などに記載したり、時には4番と5番を混ぜたものを6番に入れて、空いた4番と5番にまた別の楽器を入れて……ということが行われました。これが、トラッキングです。


ですが、ここ20年くらいになって、コンピュータによる録音が手軽に出来るようになりました。

そんな今では、ハードディスクと性能の許す限り、何百チャンネルであろうと録音ができるし、画面上でトラックの名前をつけてしかもそれを並び替えたり、という事が簡単に出来るようになってしまったので、そういう困り事はほぼなくなりました。

 
とはいえ、このトラッキングと呼ばれる作業に近いことを、データを準備する段階で行わないと、これから紹介しますが、このあとの作業がとても大変になってしまいます。

 

それがミキシング(またはトラックダウン)と呼ばれる工程です。

すこし音楽に親しみがある方なら、この工程は知っている、という方もいるでしょう。

 

たとえば、料理を想像してみてください。あなたの前には、パン粉、細切れの肉、じゃがいも、卵が用意されています。

これをそのまま皿に並べても、おいしい食べ物にはなりませんね、これが牛肉コロッケの材料だとすれば、じゃがいもは似てすり潰さなければいけないし、卵とパン粉をつけて揚げないといけません。ちょっと強引な例えですが、この調理に近い作業がミキシングです。

 

すなわち、録音物をそのまま出しても、曲の持つ感情や情景を完全に表現することはむずかしいのです。

みなさんも、コンサートに行った事があったら、「きょうはボーカルが小さくて、なんだか聴こえなかったよ」とか「ベースが大きすぎて、曲に合わないな」とか感じた事があるかもしれません。

 

楽器どうしを良く聴くには、当然「バランスを取る」という作業が不可欠なのです。

音量バランスと同時に、例えば「ベースの低音を上げる」「ピアノの高音を下げる」といった、楽器そのものの質感を変える作業も時には行われます。

これは、前述した「トラック」が分かれているから出来ることなんですね。

 

本来はさらに細かい作業がありますが、それを説明するとそれだけで記事を一つ分は消費してしまいますので割愛します。

そうしてバランスをとった楽曲を、最終的にみなさんが聴くCD、すなわちステレオだったら左と右の合計2チャンネル。それに合成する作業がミキシング(トラックダウン)です。

 

さて、今回おそらく本題になる「マスタリング」という作業。

前述したミックスダウンが終わった状態の音源(2チャンネルに落とすので2mixなどと呼んだりします。)の、最終的に微調整をする工程です。

 これも料理に例えたかったのですがちょっと該当しそうな工程が思いつきませんでした、すみません。

 

あなたが木を削って彫刻を作ろうとしたとしましょう。

最後に、ヤスリで削って表面を滑らかにしたり、場合によっては色を塗ったりニスを塗ったりして、最終的に綺麗に見えるような仕上げを行うことかと思います。例えるとすれば、これが一番近いかなあと思います。

 

よくマスタリングについて「音圧(聴感上の音量)を上げる事でしょ?」という声を見かけたりしますが、僕は個人的にはそれはまったく違っていると思っています。

たしかに、一時期のCDにおける音量レベルはとても高く、それこそ一般的なアマチュアが容易に出来るようなものではありませんでした、それはなぜかというと、人間の耳の仕組み的には音量が大きいほうが迫力を感じるとされていて(ライブハウスで大きい音を聴いてたしかにそう感じると思いますが)

結果的に、ラジオやテレビで流れる時に、出来る限り大きい音で鳴るようにしたい、というプロモーションの事情があったのだろうと推測しています。

 

しかしながら、聴感上の音量を上げる(音圧「上げるというのは、実は非常にリスクの高い行為です。それはなぜかというと、音の大きい部分と小さい部分の差をなくす、すなわち、大きい部分を無理やり潰しているからです。

それは、音楽の持つアタック感や、情感的な音量の変化(ダイナミクスと言ったりします)を損ない、音を歪ませてしまうおそれもあります。

 そういった意味で、近年ではあまりそういうことを、しなくはなってきたはずです。

 

ちょっと導入部分で話が逸れてしまいましたが、ではマスタリングで何をするの?というと、

ひとつは、異なる再生機器で聴いた時の、ばらつきを少なくする。

みなさんの中には、こだわっていいスピーカーを鳴らしたり、高価なヘッドホンを買って使用している方もいるかもしれませんが、音楽を聴く人のほとんどが使用しているスピーカーはそうではないと思います。

 たとえば、テレビ。もしくは、ひと昔まえならラジカセ。今ではPC用の小型スピーカー、場合によってはMacbookのスピーカー。もっと言えば、iPhoneipadのスピーカーのほうが、よっぽど多いかもしれません。

 

そんな時に、スタジオの高級で巨大なスピーカー、もしくはプロ仕様の高価なヘッドホンで聴いて「完璧だ!」と思った音が、車やテレビで聴いた時に、全然違う印象になってしまっていては、困ります。当然ミックスの段階から、エンジニアやディレクターは、ラジカセや小型スピーカーで確認をしながら、音作りをします。しかし、最終的にはもっと細やかな確認や音質の調整が必要になってきます。


もう一つの要素としては、アルバムにせよシングルにせよラジオにせよ、一つの曲だけを聴くということが、あまりないと言うことです。
1曲目はものすごく低音が出ていて音量も大きい、けど2曲目は低音が少なく音量も小さい、3曲目になったら高域がとても強いけど音量が中ぐらい。そんな感じでは困ってしまいますね。

ミックスダウンの作業は、同じエンジニアが続けて担当することもなくは無いですが、当然必ずしもそうとは限りません。

場合によっては、2006年8月にミックスしたものと、1993年12月にミックスしたものと、2019年3月にミックスしたものが、同じCDに入ることすら考えられます。当然ですが、逆算してその相互の関係を考慮したミックスダウンを行うことなど不可能です。

 
そんなことがあるので、マスタリングでは、そういう、機材的な差異、あるいは連続的な音楽視聴体験を、ある程度均一化しコントロールする必要があるのです。

 

それから、ミックスダウンのあと、もう少し音楽的な味付けをしたいことも考えられます。

実際はもう少しボーカルがはっきり聴こえて欲しい。しかし、音量を揃えたらすこし小さく聴こえるようになってしまった……。そんな時に、当然バランスを変えることは不可能ですが、ボーカルが聴こえやすくなるような、調整をすることは可能です。そのためのシビアな技術をエンジニアたちはたくさん持っています。中音域を少し上げてみるのかもしれないし、低音を削るのかもしれない。もしくは、左右にある音だけを全体的に少し下げるかもしれない。

とにかく、「バランスが変わった」というほどのことは当然不可能ですが、聴感でそう感じさせるような処理はここでもすることができます。

結果、マジックのように「ドラムの迫力がより増した!」とか「ボーカルが鮮明に聴こえる……」といったことが、事実上可能なわけです。

要は、ミックスダウンもしくは録音で解決しきれなかった問題や不便を解決し、様々な状況で音楽を楽しめるようにする、ということですね。

 

よく洋楽なんかの再発盤で「リマスターってなんだよ。何が違うんだ?」と思う方もいらっしゃると思いますが、当然技術や機材は年々進歩していますから、1988年には音量も小さくあまりクリアでなかったものを、今の技術では気持ちよく聴けるようにできるしかもしれません。だから、リマスターというものが行われるわけです。

(しかしながら、前述した音圧を競っていた時代のリマスターは、単に音量を上げすぎてしまった結果、音が悪くなってしまった、ということも、無くはないのですが……。)

 

さて、そんなマスタリングにはもう一つの工程があります。それは「曲間を決めること」です。

 今では配信などの影響で、アルバムを曲順通り続けて聴くことは減ってしまったかもしれませんが、アルバムというのは当然曲順も考えられています。

 

たとえば、静かなバラードの美しい余韻に浸っている最中に、すぐ次の大盛り上がりな曲のイントロが流れてきてしまったら興醒めしてしまいますね。逆に、踊れる楽曲がせっかく続いているのに、次の曲まで3秒も4秒も空いてしまったら、がっかりしてしまいます。

ですから、気持ち良い視聴体験をするためには、「曲が終わった最後の瞬間」から「次の曲が始まる最初の瞬間」の間隔が、音楽的である必要があるのです。

これを、各曲の最終調整が終わった段階から、集中して考えます。具体的に、「試しに2秒……」といって、長く感じたら「1.5秒で聴いてみよう……」などと、一曲ずつ検証しています。


また、ライブ盤のように、曲番号は分けたいけど、音はぶつ切りにしたくない、ということもありますね。この場合は「ギャップレス」といって、データ上は曲番号が切り替わるけれど、曲間は繋がったまま、という処理もあります。

(対応していない機器では、読み込みのために0.1秒とか、空白ができてしまいますが)

 

最近はDJ文化もあるのでしょうか、iTunesSpotifyなんかでは、曲間をつけずにクロスフェードをして滑らかにつなげる機能もついています。ラジオ的にも聴けるし、便利なので僕もつい活用してしまいますが、こうした曲間の余韻を楽しむ感じでなくなっているのは少々寂しくもあります。

 そんなわけで、マスタリングというのはとても大切な工程で、かつ、僕もそこに立ち会うことは非常に楽しみでもあります。エンジニアのマジックを感じ、また最後の儀式のような側面も持っていますから、スタジオのやりとりの中で、いよいよこの作品が世の中に出て行くんだ、という気持ちにもさせてくれます。

 

---------------

すみません、結局ものすごく長い記事になってしまいましたが、これが録音における各工程の違いとその内容です。出来る限り平易でシンプルな表現を心がけましたが、いかがでしたでしょうか?

 

みなさんも興味があったら、ぜひそんなことにも思いを馳せながら、音楽を聴いてみてくださいね。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

アルバム「エクセルシオール」作編曲家による解説

皆さん、長らくお待たせしました。

 

今年もこの記事を書く時がやってきました。

1st、2ndアルバムについても過去記事で解説しているので、チェックしてみてください。

「FUNKY BUT CHIC」作編曲家による全曲解説 - 宮野弦士のいまさらするまでもない音楽の話

 フィロソフィーのダンス2nd Album「ザ・ファウンダー」、作編曲家による全曲解説、その① - 宮野弦士のいまさらするまでもない音楽の話

フィロソフィーのダンス2nd Album「ザ・ファウンダー」、作編曲家による全曲解説、その② - 宮野弦士のいまさらするまでもない音楽の話

 

この3rdアルバムはおそらくは、今までで一番バラエティに富んだアルバムではないかと思います。

全作詞担当のヤマモトショウさんの記事もぜひご覧ください。

フィロソフィーのダンスエクセルシオール

https://yamamotosho.com/n/n4487fcfee025


Youtubeにアップされたティザー映像もぜひお楽しみください。

www.youtube.com

音源は下記にて視聴、もしくは購入ができます。

open.spotify.com

 

続きを読む

2018年総まとめ

心身ともに力を尽くしてきた、品川ステラボールでのバンドセットワンマン、そしてそこからスタートしたツアーの名阪公演も終わり、ようやくつかの間の安らぎを手に入れ、思ったよりも早くブログを更新する時間を作ることもできています。

まずは、ライヴにお越しいただいたみなさん、ありがとうございました。

 

さて、2018年もいよいよ佳境にせまり、また個人的にも産まれてから今までずっと過ごしてきた平成という時代も終わるということで、改めてその一年の振り返りをしてみようと思います。

具体的には、自分が携わってきた楽曲について、その制作のときの話など。

 

続きを読む